炭鉱夫は止まらない

世の中に眠った役立ちそうなものを探して綴る雑記

【感想】蜘蛛ですが、なにか? を読んでみて


『蜘蛛ですが、なにか?』は馬場翁による作品で“小説家になろう”で連載されています。
されています、と言いましたが、2018年の2月以降は更新されていませんが…。
内容は流行りの異世界転生ものですが、転生直後からチート能力を持っていたり主人公は男子高校生くらいといった作品が多い中、本作の主人公は女子高生でしかも転生先は何の特徴も無い蜘蛛のモンスターという奇抜な作品となっています。

現在、本作はカドカワBOOKSより小説版が、カドカワコミックス・エースより漫画版が発売されています。
小説版はweb版の内容と比べると少しずつ展開が変更されており、巻が進むにつれてその違いは大きくなってきています。
漫画版は小説版を元にされていると言っていいでしょう。

そんな『蜘蛛ですが、なにか?』のお話を今日はしたいと思います。
この作品についての話をするにあたって多少のネタバレは避けられないことご了承ください。
特に小説1巻の内容についてはかなり盛大にネタバレが入りますのでご注意ください。

『蜘蛛ですが、なにか?』はこんなお話

あらすじ

勇者と魔王が争い続ける世界。そんな世界で放った勇者と魔王の魔法は、世界を超えてとある高校の教室で爆発してしまう。
その爆発で死んでしまったとある女子高生は、異世界で蜘蛛の魔物として生まれ変わってしまう。
何の特徴も無い最弱モンスターとして生まれてしまった彼女は、数多の魔物が蔓延る洞窟で必死のサバイバル生活を余儀なくされる。

といった感じで物語が始まります。
なろう作品にありがちな“スキル”や“ステータス”は健在で、これらを鍛えていくことで蜘蛛子(主人公はしばらく名前が無いので…)は異世界の洞窟生活をなんとか生き延びていきます。
作者も明言している通り、『転生したらスライムになった件』の影響を強く受けており、スキルには似たようなものがちらほら。
みんな大罪系とか天使系とか好きなのかな?
というか、ステータスの派手さというか痛々しさは遥かに上回っています。
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[参考:蜘蛛ですが、なにか? 3巻より]

ちなみに本作では「なぜこのようなスキルやステータスがあるのか」について物語中盤にて明らかにされます。

逃げて抗ってなんとか生き抜く物語

あらすじでも書きましたが、本作の主人公はなろう小説に限らず最近のライトノベルにしては珍しい“最弱転生”です。
よくありがちな「表向きは無能なのに実は最強でした」的なものでもなく、文字通り最弱です。

ステータスは最弱。特殊能力は糸を出すことと毒攻撃ができること。
しかも最初は糸を飛ばしたりは出来ないのであくまで肉弾戦をしなければならないという難点あり。
そんなわけであらかじめ罠をしかけて他の魔物を倒したり、自分の身体を痛めつけながら耐性を上げたりと孫悟空もびっくりな文字通り血も滲むような努力をして強くなろうとしていきます。

しかし、そんな努力も嘲笑うように、自分で作った住処は人に燃やされ追いやられたり、追いやられた先では巨大な蜂に刺されて死にかけるなど散々な目にあってきます。

本作はそうしたギリギリの中を必死に生き抜いていく、というところが序盤の魅力となっています。

物語の展開は主人公チームと勇者チームの2つの視点から

Web版のトップで明かされているのでネタバレしてしまいますが、転生者は主人公だけでなく、爆発に巻き込まれたクラスメイト全員となっています。
そして物語は大ざっぱに分けて二つの視点で展開されていきます。
一つは主人公である蜘蛛子の視点、もう一つはクラスメイトで勇者として転生したシュン。
実際には色々なキャラの視点が入ることがあるのですが、基本的にこのどちらかが関わる物語であるのがほとんどです。

読者の予想を裏切る展開!

この作品は色々な複線がどんどん貼られていきます。
当然読んでいる読者は「これはきっとあいつのことなんだろうな」とか「あー、このキャラの運命はこうだろうな」とか思いながら読み進めていくわけですが、これがまぁ裏切られる。
しかも、予想通りになる展開も混じっているものだから全部を疑うわけにもいかないという。

かなり初期から騙されるよう誘導する複線があったりして展開が読めないあたりがこの作品の魅力の一つなのではないかなと思っています。

例として、1巻からある視点変更は何気なく読んでいると普通に舞台が変わっただけにしか思えないのですが、よくよく読んでみると何かズレがあるのに気付けて面白かったりします。
ちなみに僕は作中で明らかな描写が出てくるまで気付きませんでした(汗)

ちょっと気になるところ

個人的に読んでいて気になったところをあげていきます。
特に深い意味はなく、これがあるから読む気が失せるーなんてこともありませんが、不満も述べておかないと気が済まない性質なので…。

みんな人型になるのなんとかなんないの

これは転スラでも思ったことですが、せっかくモンスターとして始まった物語なのにやがて人型へと変身(進化)します。主人公に限らずみんなが。
なんなら転生者じゃなくても最強種はみんな人型です。蜘蛛だろうがドラゴンだろうが。

うーん、最早蜘蛛の要素残ってなくない?
糸出せるくらい? それスパイダーマンじゃん!

スライムみたいなモンスターはまぁ、その性質上人型に成れてもあまり違和感ないんですが、蜘蛛が人型になるのは…ねぇ?
まぁ、魔物の最終目標は人型ってとある漫画で言ってたし仕方ないのかな。

都合良く美少女化するのなんなの

この物語には主要キャラに女の子が複数いるわけで、そのうちの何人かはクラスメイトです。
当然クラスには可愛い子からブ○まで色々いるわけですが、美少女は美少女のままなのはともかく、ブ○や凡人は転生先の親の恩恵を受けて美少女に生まれ変わります。
あ、男は基本的に元のままです。

ブ○だけ顔変わって生まれ変わるって差別やん!

世界の最強種が蜘蛛と龍って変じゃない?

変じゃない!

と言われればそれまでですが、様々なファンタジーで最強の地位にいるドラゴンに対抗できる位置にいるのが蜘蛛ってどうよ?
ついでに言うとこの世界、蜘蛛の種族だけやたら多くね?
主人公が転生することになる最弱のモンスター、スモールタラテクトを初め、タラテクト、グレートタラテクト、ポイズンタラテクト、ゾア・エレ、パペットタラテクト等たくさんの種族が登場します。
それに対して他の魔物は大抵2種類です。
最強種のドラゴンも、属性こそ火や水、土など別れていますが、自信の進化先は1つです。
いくらなんでも蜘蛛の生態系だけ複雑過ぎでしょう!

最弱だと思ったら実は最強種の雛でしたって感じ。

終わりに

後半はなんだかんだと不満を言ってしまいましたが、正直『蜘蛛ですが、なにか?』は非常に面白い作品だと思っています。
先を読ませない展開に予想外の伏線など、読者を飽きさせないストーリーとなっています。
個人的に読むなら書籍版の小説をオススメします。
web版の小説は1つ1つの投稿が短いため、まとめて読む場合は展開があっちこっち行って正直読みづらいです。

ということで『蜘蛛ですが、なにか?』と紹介でした。
今日はそんな感じで

ではでは~