炭鉱夫は止まらない

世の中に眠った役立ちそうなものを探して綴る雑記

【感想】ゴブリンスレイヤーは変わった視点で綴られるファンタジー小説だった

元はやる夫スレにてAAと組み合わせて公開されていた、蝸牛くもによる小説『ゴブリンスレイヤー』。

この作品はライトノベルの中でもかなり特殊な作品となっており、登場人物に名前がありません。
各キャラはゴブリンスレイヤーや女神官と言った肩書きや役職で呼ばれます。
これは、この作品の世界が神の視点から見たTRPG(テーブルトークRPG)の舞台という独特な設定のため、キャラクター名は読者が好きに考えてくれればいいという筆者の考えのようです。

よくあるファンタジー小説とも違う、ソードワールドのようなTRPGのリプレイ集とも違う独特な作品『ゴブリンスレイヤー』についてお話したいと思います。

ゴブスレってどんなお話?

あらすじ

1匹なら一般人でも倒せる程度の最下級モンスター“ゴブリン”。
そんなゴブリンをただひたすら狩り続けることで銀等級という高位の階級にまで上り詰めた稀有な存在がいるという…。
冒険者になったばかりの女神官は、初めて組んだパーティーとゴブリン狩りに出かけることになる。しかし、たかがゴブリンと甘く見ていたパーティーは全滅の危機に!
それを助けた者こそが、ゴブリンスレイヤーと呼ばれる男だった。

神の介入(サイコロ)の及ばない、徹底した作戦によりゴブリン退治をするゴブリンスレイヤーを中心に始まるとある辺鄙な村の物語。

どんなに鍛えても生身の人間

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[参照:コミック版ゴブリンスレイヤー 1巻]

よくあるRPGではレベルが上がれば受けるダメージは減るし、そうじゃなくても強者には雑魚の攻撃によるダメージはほとんど入らないのがファンタジー物語のお約束と言ってもいいのではないでしょうか。
本作はそうしたお約束を排しており、どれだけ体を鍛えた強者であっても子供が扱う剣で生身を斬られれば大けがを負いますし、身体が傷つけば満足に行動できなくなるなど現実に即した内容となっています。

もちろん鍛えればより重い武器や防具を扱うことができるようになるわけで、そうすれば生半可な攻撃では負傷することが無くなるわけですが。
イメージはモンハンのような感じでしょうか。

本作のゴブリンは狡猾で危険なモンスター

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[参照:コミック版ゴブリンスレイヤー 1巻]

多くの作品ではゴブリンは弱者として扱われており、本作でも住民の認識は同じです。
ゴブリンは人間の子供程度の知能と身体能力しか持ち合わせていないため、大人であればそう苦労せずに倒すことができてしまいます。

しかし、実際に12~13歳の子供が何十人も集まって石を投げて来たり武装して襲ってきたりしたらどうでしょうか。非常に恐ろしいのではないでしょうか。
本作はそうした視点から見たゴブリンの恐怖を中心に語られていきます。
しかも、ゴブリンは極めて残虐で身勝手、そして非常に復讐心が強い生き物。その恐ろしさは子供の比ではありません。
一度襲われながらも生き延びたゴブリンは、その恨みから非常に強力な個体となって人を襲うようになっていきます。

そんな脅威をただ黙々と潰していく、そして生き残りが存在する恐ろしさを知っていることから、ゴブリンスレイヤーは常にゴブリンを必ず全滅させることを信条としています。

ゴブリンスレイヤーとは

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[参照:コミック版ゴブリンスレイヤー 1巻]

本作の主人公であるゴブリンスレイヤー。
その身なりは薄汚れた鉄兜と革の鎧、鎖帷子をまとっており、武器は安価なショートソードのみ。
全ては対ゴブリンを意識したものであり、ゴブリンと戦うことしか考慮されていない。
とても熟練の冒険者には見えない装備の彼は、ただひたすらにゴブリンを退治することで、一般人としては最高レベルの銀等級という階級まで登り詰めた冒険者です。

そんな彼の戦闘方法は「ゴブリンであればどう考えるか」を徹底したもので、その対策のためであればどんな面倒なことも卑怯な手段もい問わないという主人公らしからぬ戦法を取ります。
なぜそこまでしてゴブリンだけを狩るのか、なぜそこまでゴブリンの思考をトレースできるのか、それは彼の過去が関係してくるのですが、それは外伝作の『ゴブリンスレイヤー外伝:イヤーワン』で語られています。

ちょっと気になるところ

ショッキングなシーンがしばしば登場

本作はゴブリンスレイヤーが活躍する物語なわけですが、登場する敵も基本的にゴブリンです。
そんなゴブリンはオスしか存在せず、群れを増やす手段は他の種族のメスに産ませるという方法になります。

もう言いたいことはわかっていただけるでしょうか。

ゴブリンは人間やエルフの女性を捕らえて繁殖の道具にします。
えぇ、えぇ、冒頭からそんな内容の展開が訪れるわけで、特に漫画版はR指定入るんじゃないの?感のある描写が突然登場します。

こういうの苦手な人にはかなりキツイんじゃないでしょうか。

全然平気だと思っていた僕でも、不意に出てくるこうした描写は中々堪えましたから。

キャラがわかりにくい

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[参照:小説版ゴブリンスレイヤー 1巻]

この作品の登場キャラは一人残らず名前がありません。
全てのキャラは、ゴブリンスレイヤーだとか女神官だとか、妖精弓手や鉱人道士、蜥蜴僧侶などの役職や職業で呼び合っています。
キャラの特徴が呼称に表れているため、どんなキャラかのイメージはつきやすいのですが、そのキャラが初登場なのか既出なのか、常連なのかモブなのかがいまいちわかりにくくなる時があります。
この呼び方について合わない人はとことん合わなそうですね。
もしアニメ化した際もこの呼び方になるんでしょうが、うーん。

終わりに

ということでゴブリンスレイヤーの感想でした。
正直言えば最初はあまり期待していませんでしたが、ゴブリンという弱い存在に対して、決して侮ることなく罠などを含めた全力で挑むという物語は、意外と面白いのだなと気付かされました。
ゴブリンからの被害多すぎじゃない!?だったらもっと国を挙げて対策してもいいんじゃない!?と思うところはあるでしょう。
でも、軽犯罪に対していちいち軍隊を出すことはないと考えたらこの対応も最もかもしれません。
一風変わったファンタジーライトノベルを読んでみたい人はぜひ手に取ってみてください。

今日はそんな感じで
ではでは~