【感想】盾の勇者の成り上がりは守りで魅せるファンタジー作品
盾の勇者の成り上がりは『小説家になろう』で連載されていたアネコユサギ氏によるweb小説です。
web版は2012年から連載されており、既に完結しています。現在では書籍版、マンガ版も出ていますが、こちらはまだ完結しておりません。
あらすじ
主人公である岩谷尚文は20歳の大学生でオタク。
いつものように図書館で本を借りようとしていたところ、“四聖武器書”という不思議な本に出会い、気が付けば異世界に召喚されてしまう。
剣・槍・弓・盾の4人の勇者が召喚され、そのうちの盾の勇者として呼ばれた尚文はこれからの自分の活躍に胸を高鳴らせる。
ところが、尚文が呼ばれた国は盾の勇者の地位が最も低い地域で扱いは最低。仲間になったと思った女冒険者マインに裏切られて身ぐるみを剥がされてしまう。
挙句に強姦魔の汚名まで着せられたことで他の勇者からも嫌悪されてしまい、最低の立場に立たされてしまう。
尚文はそんな自分を嵌めた存在やこの世界に憎悪し、とにかく元の世界に帰るための冒険を始める。
物語の傾向
[参照:盾の勇者の成り上がり 1巻]
本作の物語をすごく大雑把に言うと、勇者として異世界に召喚されて敵をやっつけるという一見すると非常によくある内容です。
ところがしっかりと読んでみると
・主人公は攻撃することができない盾の勇者
・冒険直後に仲間に裏切られ、他の勇者からも蔑まれ、最低の立場から始まる
・他人を信用できないため奴隷や隷属できる魔物だけを仲間にする
・憎悪に染まった主人公は脅しや拷問を平気で行う
などなどおよそ主人公とは思えないキャラと境遇になってしまいます。
特に主人公が攻撃出来ないというのはかなり珍しいのではないでしょうか。
しかも、なろう小説にしては珍しく主人公側が苦戦することが非常に多いです。
[参照:盾の勇者の成り上がり 5巻]
個人的には適度にピンチな場面が訪れたほうがストーリーに緊張感が生まれるので嬉しいですね。
ダークヒーロー的な側面があるため好きな人にはカッコいいと感じるでしょうが、敵対者に拷問や公開処刑を行うなどえげつない行為を行うため人によって好みが分かれそうです。
世界観
[参照:盾の勇者の成り上がり 1巻]
本作の世界は人間の他に亜人や獣人、ドラゴンやグリフォンといった魔物も存在している剣と魔法のファンタジー世界です。
なろう小説ではよくあるレベルやステータス、スキルも存在しているゲームのような世界であり、実際に他の勇者は「ブレイブスターオンライン」や「エメラルドオンライン」、「ディメンションウェーブ」というゲームの世界に来たと勘違いしてしまいます。
この世界では現在、次元の狭間から大量の魔物が襲来する“波”と呼ばれる現象に悩まされており、それを解決するために尚文達4人の勇者が召喚されました。
過去にも勇者が召喚されたことは何度もあり、波に関わらずこの世界が危機的状況に陥った時は勇者の召喚ができるようです。
web版と書籍版とマンガ版の相違
本作品は『小説家になろう』で連載されていたものが加筆・修正されて書籍版が発売され、さらにマンガ版が発売されています。
web版は完結済みで、書籍版が販売されている現在も閲覧可能です。
盾の勇者の成り上がり -小説家になろう-
さて、では具体的な違いについて。
web版と書籍版の違いは4巻まではほとんどありません。一部イベントが追加されたりスキルの名称が変更になったりといった細かい違いはあるものの、大まかな展開は同じです。
特に1巻に関しては恐らく一切違いがありません(細かく比較してないので自信はありませんが)。
ところが5巻からは大きく展開が異なってきます。
web版では出てこなかったキャラが登場したりweb版には無かった波が出現したりと、完全に新しい展開が繰り広げられていきます。
[参照:盾の勇者の成り上がり 9巻]
これによってweb版では終盤に知ることができる波の真実の一部が明らかになったりもします。
その後もweb版にはいなかったキャラが仲間になるなど書籍版ならではのストーリーが繰り広げられていくため、本作を気に入った人は書籍版を読み進めることをオススメします。
web版のお話もそれはそれで面白いんですけどね。
ちなみにコミック版は書籍版を元に描かれています。
小説に比べて悪役の悪さが際立っていたり、主人公への扱いがより酷くなっていたするので、尚文がかなり可哀そうな感じになっています。
外伝 槍の勇者のやり直しについて
本作『盾の勇者の成り上がり』の外伝作品として、『外伝 槍の勇者のやり直し』という作品があります。
これは槍の勇者である元康が"とあるアイテム"の影響で物語の冒頭である召喚されるところへとループしてしまう物語です。
ループするきっかけとなるタイミングは物語の終盤となります。そのため、本編を知っている前提の展開が多く、結果としてネタバレもかなりあります。
更に、元康のキャラが本編の序盤と終盤で完全に別キャラになっているため、本編を最後まで知らないと「誰だこいつ」感が非常に強いです。
こういった事情からこの作品を読むのは本編『盾の勇者の成り上がり』を全て読み終えてからをオススメします。
間違って本編を読む前にこちらを読んでしまい、不快感を感じてしまっても責任を持てません。
一方でこの作品が非常に面白いのも事実です。
レベルやスキルを引き継いだ“強くてニューゲーム”状態で物語が始まるため、ほぼ全ての戦闘が一方的なのもあり、本編のような緊張感はあまりありません。
また、その強さをふざけた方向に発展させる傾向があり、目からビームを出す魔法を開発したり槍で車形態に変身したりなどかなりコミカルな展開が多めです。
そうした笑いの面がありながらも、未来を変えるために安易な行動に出てもろくな結果にならないという点は相変わらず存続しており、コメディで終わらない面白さがあります。
あと、本編とは違った活躍をするキャラが多いのも見どころですね。
『盾の勇者の成り上がり』を読み終えたらぜひ『槍の勇者のやり直し』も読んでみて欲しいところです。
難点は本編の書籍版がまだ終了していないことですが…。
終わりに
アニメ化するということで前々から気にはなっていた本作をようやく読んでみました。
5年以上前に完結している作品ということで正直あまり期待はしていないかったのですが、思った以上に楽しめました。
盾という戦闘を描写するには非常に地味な役職でありながら、よくここまでわくわくさせてくれるなと驚きがありました。
例外的に盾で攻撃できるスキルがあったりするのですが、個人的には主人公は完全に攻撃無しで進めてほしかったところです。
クズ王やビッチ姫のせいでかなりイライラする機会がありますが、それもあっての盾の勇者が成り上がる過程が楽しめるのではないかと思います。
一部胸糞悪くなるシーンがあるかもしれませんが、ファンタジー作品が好きな人ならばきっと楽しめると思います。
今日はそんな感じで
ではでは~