ポータブルなBluetoothスピーカーを一から自作してみた
レンタルルームや公民館なんかを借りて友人と集まったりなんかしたとき、「BGM流したいなぁ」なんて思ったことはありませんか?
とはいえ大きいスピーカーを持っていくのは大変だし、じゃあ小さいポータブルスピーカーを買ってみようかと思ってお店に行くと音は歪んでるし不自然に低音がボンボン鳴っていてとても聴けたものじゃない。
そこで今回は、小さいながらが音質もそれなりなポータブルBluetoothスピーカーを作ってみました。
以前、据え置き用のBluetoothスピーカーを作ったことがあるのですが、これは既存のスピーカーと既存のBluetoothアンプを組み合わせただけのなんちゃってBluetoothスピーカーでした。
www.coal-miner.com
しかし、今回はそうはいきません。小型の組み立てキットなんて都合の良いものはないので、スピーカーの筐体からアンプ回路まで一から設計してみました。
一から作ったためかなり長い記事となってしまいましたが、お付き合いいただければと思います。
設計コンセプト
今回設計するスピーカーの要求はこんな感じです。
・Bluetoothで誰でも簡単に音楽提供可能
・持ち運びやすい小型サイズ
・それなりの音質は欲しい
・みんなで聴けるよう音の広がりを
どんなにニッチな要求だろうと自分の希望通りに作れるのが自作のメリットですね。
今回は上記の内容に沿って設計を考えていきたいと思います。
Bluetoothでだれでも簡単に音楽提供可能
ポータブルスピーカーを作るにあたって一番簡単なのは、音楽プレイヤーのイヤホンジャックから有線で繋いでしまう仕様です。
けれど、今の時代誰もが音楽プレイヤーを持っているわけではないし、YoutubeやApple music、Spotifyなどスマホから音楽を流したいなんてことも少なくないと思います。
ここで、有線接続となるとスマホを手放さなければならなくなります。
スマホが手元にないというのは抵抗がありませんか? 少なくとも僕は嫌です。
そこで活躍するのがBluetoothです。AndroidだろうがiPhoneだろうが搭載しているBluetooth機能を使って接続すれば、手元からスマホを手放すことなく音楽の提供が可能となります。
ではどうやってBluetooth機能をスピーカーに持たせるか。オーディオ用のBluetoothモジュールを使います。
今回使用するBluetoothモジュールはMicrochip社のBM62です。このBluetoothモジュールに5Vの電源とタクトスイッチを一つ繋げば、それだけでもうBluetooth経由で音楽が流せます。
流石に出力が乏しいのでこれだけだとイヤホンを鳴らせる程度ですが、非常にお手軽です。
このモジュールの素晴らしいところは、技術基準適合証明(技適)の承認を得ていることです。
技適を得ているオーディオ用のBluetoothモジュールというのはBM62シリーズと同社の旧製品RN52くらいしかありません。(少なくとも僕は知りません)
実はオーディオ用のBluetoothモジュールを入手するだけであれば他にもいくつか選択肢はあるのですが、まず技適を得ていません。自分で技適を取得するという手もありますが、数万単位のお金と多大な手間がかかります。そして技適を得ていないBluetooth製品を使うと電波法違反となってしまいます。
(詳細はこちらをどうぞ
総務省 電波利用ホームページ|電波監視|技適マーク、無線機の購入・使用に関すること
)
さて、このBM62ですが、1つ難点があります。というのも、入手性が悪く、マルツオンラインで見積依頼をするかDigikeyから購入するしかありません。
Digikeyの方が単価は安いのですが、海外からの注文なので輸送費がかなり高くつきます。
具体的には輸送費だけで2000円。ただし6000円以上購入すると輸送費が無料になるので、他にも部品を購入する予定がある人にはDigikeyがオススメです。
BM62SPKS1MC2-0001AA Microchip Technology | RF/IFおよびRFID | DigiKey
Digikeyで購入しない場合は、マルツオンラインを利用します。
こちらは送料が500円程度な上に3000円以上の買い物で送料が無料になるので、購入時のハードルが低めです。
ただし、今回使用するBluetoothモジュールは普段取り扱いが無い商品なのでわざわざ見積依頼をする必要があるうえに、若干高めです。
見積依頼自体は簡単なので海外通販を使用するのに抵抗がある場合、6000円分も購入する予定が無い場合はこちらがオススメです。
見積は以下のページから「未搭載品の見積依頼はこちら」から「BM62SPKS1MC2-0001AA 」という商品名で見積依頼を出せば大丈夫です。
Digi-Key社全製品を法人様割引価格&請求書払いで供給【Digi-Key社正規代理店 マルツエレック】
一見すると企業向けの見積依頼に見えますが、個人でも行えるので安心してください。
それなりの音質は欲しい
小さくするだけが目的であれば超小型のスピーカーユニットを使えばいいんです。
ということで1インチユニットを鳴らしてみると、流石にこれ単品で使うには低音がスカスカ過ぎてちょいと厳しい。これで満足できるならスマホのスピーカーでいいじゃん! って話になります。
となると最低限2インチのスピーカーユニットを使いたいところ。
ということで今回は2インチのフルレンジスピーカーユニットを使ってみます。
フルレンジスピーカーユニット2インチ(50mm) 8Ω/MAX6W [スピーカー自作/DIYオーディオ]/1個
NFJが販売しているものなのでそんな変なものじゃないと思いますが、スポット品なので在庫が無くなり次第終了なのが痛いところ。
他にも同サイズのものは色々あるので、気軽に試してみると良いと思います。
ただし販売業者の名前には注意してください。
怪しい中国メーカーから購入すると届くのに時間がかかるうえにろくでもないものが届く可能性も…。
みんなで聴けるよう音の広がりを
このスピーカーを用いるシチュエーションは、みんなでわいわいやっている部屋の片隅に置かれているというものです。
そのため、視聴者は必ずしもスピーカーの正面にいるとは限りません。むしろ正面にいない場合の方が多いでしょう。
そこで正面の他に側面からも音が出せないかと考えました。そうすればスピーカー背面を除いた全方向で音楽が聴けることになります。
簡単に解決するならスピーカーユニットを側面にも追加するという方法がありますが、そうすると消費電力が倍増してしまいます。限られたバッテリーで駆動させるポータブルスピーカーという特性を考えるとあまり消費電力が高いのは考え物です。
そこで役立つのがパッシブラジエーターです。
レア!2インチ(48mm) パッシブラジエーター [スピーカー自作/DIYオーディオ] 在庫少/1個
これはスピーカーユニットの裏側に発生した振動を利用して動くパッシブタイプの振動板ですので電力を消費しません。なのでこいつをスピーカーの側面に取り付けてやりましょう!
しかも、こいつは小型スピーカーにありがちな低音を補強してくれるというメリットもあります。市販のポータブルスピーカーで低音がガンガン鳴っているやつにはこいつが載っているらしいです。
「低音ガンガン鳴るのが嫌だから自作するんじゃないの?」という声が聞こえてきそうですが、たぶんパッシブラジエーターを使うだけならそこまで低音鳴らないんじゃないかなと思って…たぶん…。
持ち運びやすい小型サイズ
せっかく作ったスピーカーも大きすぎて持ち運びに不便では使わなくなってしまいます。
ではどれくらいのサイズなら持ち運べるか。一つの目安となるのが、500mlペットボトルのサイズではないでしょうか。
ペットボトルであれば大抵のカバンに入りますし、そこまで億劫に思わないでしょう。
問題は2インチスピーカーユニットを採用する時点でどう頑張ってもケースの直系が70mm以上になってしまう点ですが…。
500mlペットボトルの基本サイズがφ65×205とのことなので既に破綻しているわけですが、せめて横幅だけでもペットボトルサイズにしたいところです。
スピーカー設計
筐体設計
さて、上で述べたコンセプトを満たすような設計をしていくと…
ドン!
はい、このような筐体の設計になりました。
この形になるまでの過程は色々ありましたが説明が面倒なので端折ります。
ポータブルスピーカーなのに電池が入りません!
電源はモバイルバッテリーを使います!
最近ではモバイルバッテリーを持っている人も珍しくないし、万が一の時はスマホの充電にも使えて便利でしょ?
あと、USB電源駆動にすることでスマホの充電器を接続して据え置きとしても使えるので便利便利!
本当のところは電池を4本入れると筐体が一気にでかくなってしまうという問題の解決方法がわからず、苦肉の策で外部電源としました。
あと、乾電池って電圧変動が大きいのでBluetoothモジュールみたいに駆動電圧範囲が狭い部品には向いてないんです。
回路設計
スピーカーの心臓部となる電源、Bluetoothモジュール周り、そしてアンプの回路設計をしていきます。
電気は専門ではないので、回路図的にはもしかしたらおかしいところがあるかもしれません。何か変なところがあれば自分なりに修正してください。
とりあえず作ったものがこれ。
まずは電源。
電源はmicro USBから5Vを給電。L1とC1でノイズを除去します。ここからBluetoothモジュールとアンプに電源を供給します。
次にBluetoothモジュール。
モジュールは上で言ったようにBM62を使用します。このモジュールはこれだけでほぼ完結しているのでほとんどやることはありません。
電源を供給してやって各種スイッチを接続し、あとは出力をアンプに繋いでやるくらいです。
ちなみにBluletoothモジュールに使っているSW1~4のうち必須なのはSW4のPWR_Pairだけです。
2秒間くらいの長押しで電源ON、さらに3秒くらい長押しでペアリングモードに移行するボタンです。
SW1~3はお好みで採用したりしなかったりしてください。
最後にアンプ部分。
5Vで動くオーディオアンプで入手性が良いものとなると非常に限られてきます。
しかも、今回はポータブルスピーカーということで出来るだけ消費電力が少ないものが好ましくなります。
となると選ぶべきICは5V駆動できるD級アンプです。
秋月電子で上記要素を満たしたICはPAM8408、NJU8755の2種類です。(最近PAM8403が追加されていました)
このうちどれを選ぶかはお好みでって感じですが、僕は安くて最大出力も大きいPAM8408を選びました。
ただ、正直ここまで出力いらなかったかなと思います。たぶん1W×2で十分かな?
回路構成は電源部分をちょっと贅沢にしたくらいで、基本的にはデータシートに載っている推奨回路とほぼ同じです。
今回の回路はポータブルスピーカー用に設計しましたが、アンプ部分を変えれば据え置き用のスピーカーにも使えるでしょう。
電気回路の製作
電気部品の入手
今回作成した電子回路は極力入手性が良く価格も安いものを選びました。
ほとんどの部品は秋月電商で購入可能なのです
akizukidenshi.com
ただし、Bluetoothモジュールだけは入手が少々困難で、Digikeyかマルツで購入する必要があります。
電子回路の組立
今回作成するBluetoothスピーカーには、大きな基板を入れるスペースがありません!
そこで、スイッチ基板、Bluetoothモジュール基板、アンプ回路基板の3つに分けて、縦方向に積み上げていく方式を取ります。
回路を作成するにあたって注意点が2つあります。
一つはアンプICの取り付けです。
今回使用するアンプICのPAM8408はプリント基板での作成を前提とした作りの表面実装部品です。
このままではユニバーサル基板に載せることはできませんので、プリント基板を起こしてしまうか、変換基板を用いる必要があります。
今回僕は変換基板で対応しました。
幸いこのICはSO-16という標準パッケージ品です。SOP16ピンのDIP変換基板を使用すれば問題なくユニバーサル基板に使用することができます。
SOP16ピンDIP変換基板: パーツ一般 秋月電子通商-電子部品・ネット通販
問題は、表面実装部品のはんだ付けは難易度が高い点です。
表面実装のICは端子間が非常に狭いため、うっかりすると簡単に端子と端子がはんだで繋がりショートしてしまいます。
テクニック次第で対応できなくもないですが、一般的にはフラックスというはんだ付け促進剤を使用します。
ホーザン(HOZAN) フラックス 鉛フリーハンダ対応 便利なハケ付きキャップ付 容量30mL H-722
これを使うとはんだが綺麗に流れやすくなり、表面実装部品のはんだ付けが非常に簡単になります。
というかこれを使わないと普通は無理です。失敗したくなければ大人しくフラックスを使いましょう。
ただし、フラックスは腐食剤でもあり、人体に有害な物質です。使用の際は十分に注意して使ってください。
手などについた場合は石鹸でしっかりと洗うように。
また、フラックスを使った箇所はフラックスクリーナーで洗浄しましょう。放っておくと基板や部品を腐食してしまいかねません。
ホーザン(HOZAN) フラックスクリーナー フラックスリムーバー 樹脂を侵しにくいため基板、コネクターにも安心して使える Z-275
もう一つの注意点はBluetoothモジュールの配線です。
BM62というBluetoothモジュールもプリント基板での作成を前提とした作りになっています(というか大抵のBluetoothモジュールはプリント基板前提です)。
そのため、ユニバーサル基板に直接繋げることができません。
ではどのようにするか。
手っ取り早いのは専用のプリント基板を作成してしまうことです。最近では外注でも非常に安くプリント基板を作ることができますからね。
配線も簡単ですしうっかりパッドを剥がしてしまう事故も起き難くなります。
個人的にはこちらがオススメですが、そこそこ費用がかかってしまいます。
もう一つの方法は部品の足を使って無理矢理繋げる方法です。
モジュールの全ての端子を使う場合はとてもじゃないけれど選べない選択肢なのですが、37個も端子がある割に実際に使用する端子は10個程度。手はんだで取り付けてもまぁなんとかなる量です。
僕はこちらの方法を取りました。
ちなみに細かい上にはんだ付けし辛いため、難易度はかなり高めです。間違っても電子工作初心者は挑戦しない方がいいでしょう。
スイッチ基板、Bluetoothモジュール基板、アンプ基板を作成したら、線材で繋いでいきます。スペースがあまりないので、細めで柔らかい線材を使いましょう。オススメはAWG24の撚線でしょうか。
協和ハーモネット UL耐熱ビニル絶縁電線 黒白赤黄緑青茶 各2m UL1007 AWG24 2m <7>
線材を繋いだらスペーサーを使って基板を縦に積んでいきます。
積み上げにはスペーサーという部品とナットを使います。
個別に購入してもいいですし、いろいろな長さが入ったセット品を購入するのも手です。
Kuman 180個 M3ねじ ナット六角スペーサー ナイロンねじ ブラック キット arduinoに適用回路基板 K79
画像には電源ラインにフェライトコアをかませています。僕が持っているモバイルバッテリーはノイズが凄まじいのでフェライトコアを使っていますが、安定しているやつだといらないかも?
ここまで出来たら適当なスピーカーにつなげるだけでも音が出ます。
スピーカー本体に組み込む前に必ず動作確認をしておきましょう。
アルミ板への取り付け
このままスピーカーに突っ込んでもちょっと使いにくいので、スピーカーの蓋となるアルミ板に取り付けています。
アルミ板は厚さ1mmのものを使います。
パッシブラジエーターの固定にも使用するので、300mm×200mm程度のサイズを購入すると良いと思います。
光 アルミ1×200×300mm HA1230
これより薄いとちょっと耐久性に難が出てきますし、厚くすると加工性に難が出てくるので1mmが丁度いいと思います。
穴あけはハンドドリルでも可能ですが、カットはハンドソー等の電動のものを使いたいところ。
ホームセンターの工作室なんかを利用しましょう。
折り曲げ加工は素手で十分可能なのですが、綺麗に曲げるためにはクランプで固定することをオススメします。
これも工作室に行けば置いてあると思います。無ければ他に代用できるものが無いか探してください。
アルミ板の加工が完了したら基板を取り付けていきます。
組み立てて気付いたのですが、USB端子を出す穴の加工をミスってしまったため隙間が大きくなってしまいました…。
スピーカーボックスの製作
木材の入手
まずは木材の入手ですが、自力でカットできる環境にあるのならば適当にホームセンターで購入すればいいと思いますが、なかなかそんな環境は無いと思います。
ということで購入ついでに業者にカットしてもらっちゃいましょう。
オススメは楽天にあるオカモクというお店。図面を出せばカットや穴あけをしてくれちゃいます。
しかもカットは無料! (穴あけは有料)
納期は混雑具合によるでしょうが、年明けという忙しい時期でも注文してから1週間で届きました。結構早いと思います。
今回僕が使用した赤松集成材で厚さ6mmはたぶんこのお店くらいしか取り扱っていません。
MDFでもよければ他に選択肢はありますが。
ちなみに赤松集成材はただ見た目が木材っぽいという理由だけで選んでいます。特別音質に優れているわけではありませんのでご注意を。
実際に届いたのはこちら。
非常に綺麗に仕上がっていると思います。
この画像に入っているのは実際に組立に使用する部品だけですが、端材もちゃんと一緒に送ってもらえます。クランクで挟む時など端材は非常に便利なので貰っておくといいでしょう。
下準備
カットしてもらった木材を組み立ててはい終了。となればよかったのですが、今回設計したスピーカーを作るためには追加工など色々と下準備が必要になってきます。
木材の追加工
基本的なカットは全て行ってくれる加工屋ですが、凹みを作るような特殊なカットには対応してくれません。自分で追加工を行う必要があります。
幸い赤松集成材は柔らかい木材なので、ハンドドリルや小型のノコギリで十分加工することが可能です。
スピーカーボックスの天面、中板の穴あけは自分で行いましょう。
木材の面取り
面取りというのは簡単に言ってしまうと角を取ってしまうことです。
カットされただけの木材は角が尖っているため、触ると引っ掛かったりケガをしてしまう可能性があります。
面取りはヤスリを使えば簡単にできます。仕上げは紙やすりを使った方がいいですが、ざっくりと角をとるだけであれば金属ヤスリを使ってもかまいません。
こうした角を取ることで触っても安全になりますし、角が取れているものというのは柔らかい印象になります。
組立てから面取りを行ってもいいのですが、出来るところは材料の状態から面取りをしてしまってもいいでしょう。
ちなみに面取りする箇所は組立後に外に出ているところだけで十分です。
むしろ内側の面を取ると位置合わせが大変になっちゃいます。
パッシブラジエーター固定
パッシブラジエーターはスピーカーユニットのように固定する部分がありません。
そこで、固定するためにはスピーカーの板と板金で挟み込んでやる必要があります。
板金には加工性が良く強度もそれなりにあるアルミを使いましょう。操作パネルに使ったアルミ板と同じでOKです。
一気に大きな穴をあけられれば簡単だったのですが、そんなものは特殊な工具になるので普通持っていません。
となれば取れる方法は一つ。小さい穴をひたすらあけて円っぽくするのみです。
幸い外から見えない位置ですし、この穴の形状自体はほとんど音質に影響無いでしょう。
綺麗に穴あけをしたい場合は特殊な工具を購入するか、外注するしかありません。
あとはスピーカーボックスに取り付けるためのネジ穴をあけ、スピーカーボックス側にも下穴をあけてネジ止めすればパッシブラジエーターに関しては完了です。
スピーカーユニット取り付け
スピーカーボックス前面部にスピーカーユニットを取り付けます。
スピーカーユニットの仕様によっては後から取り付けることができるのですが、今回選んだスピーカーユニットは裏側から留めるものです。間違って先にスピーカーボックスを組み立ててしまわないように!
ちなみに今回選んだスピーカーユニットはネジ止め部分が1cm弱浮いています。そのため、別途木材を使って嵩上げをしてもらう必要があります。浮いた箇所には別の木材をボンドで貼り付けて嵩上げしてしまいましょう。
ちなみにこの高さはスピーカーユニットによって違うので、各自で確認してください。
スピーカーの組立
さぁ、下準備が終わったらようやく組み立てです。
特に決まった組立手順はありませんが、各部品ちゃんと垂直に取り付けるよう注意しておきましょう。
垂直に取り付けないとどこかでズレが生じ隙間ができてしまいます。
組み立てには図工でおなじみ木工用ボンドを用います。
ケチらずたっぷり付けちゃいましょう。特にスピーカー部分の部屋は隙間があると空気が漏れて音質を大幅に損なってしまいます。
ただし、表側にボンドがはみ出ると見た目的にも組立性的にもよろしくないので、そこは拭き取るようにしてください。
スピーカーが組み立て終わったら、最後にアンプを繋いで完了です。
ここまで出来たらひとまず完成と言ってもいいでしょう。
ただ、このままだとちょっと見た目的に乏しいですし、スピーカーユニットが剥き出しでは持ち運び時にうっかり壊しかねません。
そこで今回はここから更にニス塗りとカバー作成を行っていきます。
ニス塗り
木材へのニス塗りは見た目の変化と共に防腐効果が得られます。
今はニスなんて100均でも売っています。特に理由が無ければとりあえず塗っておいた方がいいでしょう。
ちなみに僕はニスなんて小学生の頃の図工でしか使ったことがありませんでした。
その結果、かなりムラのある塗り具合に…。
これから塗る人はちゃんと調べてから塗った方が良いです。
www.diy-shop.jp
スピーカーカバーの作成
スピーカーユニットは外からの力に非常に弱い部品です。据え置き用であれば注意しておけば壊れる心配は少ないですが、ポータブルとなればうっかりスピーカーユニットに何か尖ったものが刺さってしまうなんてことも。
そこで役立つのがスピーカーグリル。金属製の網でスピーカーを保護します。
しかし、2インチ用のスピーカーグリルなんてものはそうそう売られていません。となれば自分で作るしかないでしょう。
今回使用したのはバーベキュー用の金網。
正直もっと線が細く目が細かい網が理想だったのですが、なかなか理想の網が売られていませんでした。
一般的に売られている網は編んでいるだけでカットしてしまえばすぐにバラバラになってしまいます。しっかりと接合されている網は非常に高価なため、今回のような用途に使うにはもったいないと思います。
ではどうするか。自分で接合してしまいましょう。
東急ハンズで売られているこちらの金網は電子工作用のはんだでも十分接合することが可能です。
そうは言っても電子部品に比べるとはんだの付きは悪いので、ここでもフラックスを活用しましょう。
カット予定の端をくまなくはんだ付けしたら、ニッパーでカットです。
綺麗に形を整えたらスピーカーグリルの完成です。
ちなみに作った後に知ってしまったのですが、グリル用マイクロメッシュアミという製品の方がスピーカーグリルに向いていそうです。しかも、こちらは網目がしっかり溶接されているためはんだ作業いらず。
パール金属 グリル用 マイクロ メッシュ アミ H-6542
価格は僅かに高めですが、作業性とか網目の細かさとか考えるとどう考えてもこちらの方が優れています。
もしこれから作る人はこちらに挑戦してみてください。
さて、このスピーカーグリルを貼り付ければスピーカーユニットに危害が加わる心配が減るわけですが、いくらなんでもこのままでは見た目がアレです。
そこで、スピーカーグリルを隠すようにスピーカーカバーも作成しちゃいましょう。
直接布をスピーカーに貼り付けるというのも一つの手ではあるのですが、布がたるんでしまいがちですし、何より接着剤を使った部分の布の色が変わるためダサいです。
そこで、まずはスピーカーカバーの枠組みを作りましょう。
使用するのはガンプラでおなじみのプラバンです。
タミヤ 楽しい工作シリーズ No.124 白色プラバン 1.0mm厚 B4サイズ 2枚入 工作素材 70124
こいつはカッターナイフで切れる程度には加工が容易な上に、タミヤセメントという専用の接着剤を使えば非常に強力に接着されます。
タミヤセメント 角びん 模型用接着剤
ということで出来た枠組みがこちら。
これに適当な布を貼り付けていきます。布はボンドでくっつきます。
好きなデザインの布を使用すればいいと思いますが、薄すぎると網が透けて見えるので注意してください。
また、この貼付け作業の際、しっかりと引っ張って付けないと完成時に弛んでダサいのでこれまた注意してください。
そして完成したスピーカーカバーがこちら。
まぁまぁの出来ではないでしょうか。
プラ板による枠組みの裏側で接着しているため、表向きには接着剤の跡が見えません。
あとはスピーカーグリルとスピーカーカバーをスピーカー本体に貼り付ければ完成です。
そうしてようやくできた完成品がこちらです。
比較的順調に進んできたスピーカー作成ですが、ここにきて大きなミスが発覚!
いざスピーカーカバーを取り付けてみたらサイドの長さが足りていませんでした!
これは、枠組みに布を貼り付けたことでスピーカーカバーの厚みが変わってしまうことを計算に入れていなかったミスです。
布によってこの厚みは変わるでしょうが、0.5~1mm程度で見ておけば大丈夫かと。
動作の感想とか
ようやく完成したポータブルBluetoothスピーカー。
さっそく動作させてみましょう!
Bluetoothスピーカー操作説明
操作手順
・モバイルバッテリーをONにする
・PWR_Pairボタンを長押し(5秒くらい)
・スマホ又はオーディオプレイヤーで「Dual_Mode_SPK」というBluetoothデバイスを探してペアリング
・音楽を流す
以上です。
簡単ですね。
使用するモバイルバッテリーですが、消費電流はスマホの充電に比べればずっと少ないので何でも大丈夫です。
また、一度ペアリングを成功させると2回目以降は電源を入れた段階(電源2秒くらいの長押し)で自動で接続してくれます。
なお、そのまま再生すると非常に音が大きいです。音楽を再生する前にアンプのボリュームをがっつり下げておきましょう。
マンションなんかだと軽く近所迷惑になる程度には大きい音が出てきてしまいます。
さてさて、ようやく音を奏で始めた自作ポータブルBluetoothスピーカーですがその音質やいかに!?
んー、悪くはないけど良くもないですね。
流石にサイズがサイズなだけあって低音はかなり寂しいですし、なぜか高音も削れてしまっています。
ようするにかなり中音域に寄った音質になっています。
まぁ市販のポータブルスピーカーに比べると音が歪んでないですし、無駄にボンボン鳴る低音も無いのでその点は個人的に評価できるのですが。
携帯性や使い勝手などを考えると十分なものではあるので及第点と言ったところでしょうか。
しかし、音質についてはまだまだ改善の余地があります。
今回の反省点
さて、初めて作成したポータブルBluetoothスピーカーですが、いざ出来上がってみるといくつも改良すべき点が見えてきたので記録に残しておこうと思います。
もしこの記事を見て作成しようと思った人は参考にしてみてください。
パッシブラジエーターが機能していない
パッシブラジエーターというものを今回初めて使ってみたのですが、正直あまり機能していません。
耳をすませばかすかに鳴っていることがわかります。しかし、そこから出ている音はスピーカーユニットから出ている音から高音、中音を削って更に音を小さくしたようなもの。
まぁそりゃスピーカーから出てない音を増幅できるわけがないですよね。
恐らくですが、このパッシブラジエーターを有効活用するにはスピーカーボックスの容量をもっと稼がないといけないのではないでしょうか。
今回のスピーカーは携帯性に重きを置いたため、容量を無視した設計となっています。この容量不足によってパッシブラジエーターを満足に動かすだけの力を得られなかったのではないかと予測しています。
今回の設計では満足いくだけの効果が得られなかったため、いっそ無くしてしまってもいいかもしれません。
あるいは改良してバフレスにしてしまうとか。
しかし、スピーカーボックスの容量が小さいのでバフレスもあまり意味が無いと思います。
アンプの音質が微妙
低音は仕方ないにしても高音まで削れてしまっている今回のスピーカーですが、色々調べたところその原因はアンプにあるようでした。実際に他のしっかりした作りのアンプを繋いだところ、高域までしっかり鳴ることが確認できましたので。
ただ、その原因がPAM8408というICによるものなのか、回路設計が良くないのかまでは調べきれていません。回路的に可聴域の高音が削れるような回路をしていないため、恐らくICが原因だと思いますが…。
他のアンプICを使えば解決できる可能性はありますが、もしかすると5V駆動の限界という可能性もあります。
迂闊にアンプを交換して安物スピーカーみたいに音が歪むのも嫌なので、とりあえずはこのまま使用する予定ですが、改良の余地があるということは述べておきます。
電子ボリューム面倒くさい
今回使用したアンプICであるPAM8408には標準で電子ボリュームが搭載されています。
可変抵抗が必要無いということで部品代的にお得ですし、一般的に音質的にも有利と言われています。
しかし、この電子ボリュームですが電源を切る度にリセットされてボリュームがMAXになってしまいます。
正確にはモバイルバッテリーの電源を入れっぱなしにしておけばリセットされないのですが、繋ぎっぱなしでの輸送を想定していませんし、何より待機電力が必要になるためモバイル向きではありません。
正直言ってしまうとここは多少音質を落としてでも可変抵抗でボリュームを作るべきだったかなと思っています。
そうするとアルミ板や基板等いろいろ設計し直す必要があるため、今のところ変える予定はありませんが…。
あると便利な道具達
今回のポータブルBluetoothスピーカーの作成に使った道具のうち、あると便利な道具を紹介していきます。
無くても工夫次第でなんとかなりますが、持っていると何かと便利です。
F型クランプ
固定用の道具です。
ボンドや接着剤で接着中のものをしっかり固定するために使います。
工作では必須と言ってもいい道具でしょう。
趣味の工作に使う程度であれば4本セットの安いやつで十分だと思います。
スーパーX
どんなものでも接着可能な万能接着剤です。
ボンドと違ってプラスチックや金属も接着することが可能で、しかも弾性があるため耐久性もあります。
ただ、ボンドよりも接着に時間がかかる点だけ注意が必要です。
金属ヤスリ
ざっくり削り出すときに使うヤスリです。
紙やすりと違ってゴリゴリ削れます。
ただし、仕上げには向かないので使いどころを間違えないようにしましょう。
はんだごて
便利な道具というか、必須道具ですね。
ホームセンターで1000円程度で売っているはんだごてでも作れないことはないのですが、個人的にオススメなのはHAKKOが出しているダイヤル式温度制御はんだごてFX600です。
電子工作において、はんだを溶かすのに最適な温度というのがあります。
安価なはんだごてというのは一定の電力を消費し続ける設計のため、こて先の温度がひたすら上がってしまいます。そのため、部品やはんだに過度な熱が加わってしまい、部品やはんだに悪影響が出てしまいます。
その点、こちらのはんだごてであれば常にこて先が常に一定になるよう調整されるため、部品を熱で壊しにくくなり、はんだ付けもしやすくなります。
既にはんだごてを持っている人でも買い替える価値があると思います。
ヒートクリップ
熱の伝達を妨げるための部品です。
はんだ付けの際、部品の足をヒートクリップで挟むことで部品を熱から保護します。
ICやトランジスタなど半導体部品ははんだの熱で簡単に壊れてしまうので、電子工作の必需品と言っていいかもしれません。
ヘルピングハンズ
アーム付きのクリップです。
これで基板を挟んで固定したり、線材を挟んだりすることではんだ付けの作業性を大幅に改善してくれます。
無くてもそれほど問題ありませんが、あると非常に便利です。
ピンセット
電子工作で非常に便利なピンセット。
部品のつかみやすさ、ばね強さどちらも丁度良い感じでとても使いやすいです。
特に表面実装部品を扱う際にその使い勝手の良さを実感できると思います。
キムワイプ
濡れても破れない頑丈なティッシュだと思ってもらえればいいです。
接着剤やフラックスリムーバーをふき取る際に使います。ティッシュでふき取ろうとすると破れて余計悲惨なことになるため、このキムワイプを使うようにしましょう。
終わりに
今回ほぼ一から全て設計したポータブルBluetoothスピーカーですが、とりあえず使用に耐えるものが出来上がってよかったです。
Bluetoothスピーカーの自作については結構需要があるようで、以前作成したなんちゃってBluetoothスピーカーの記事には結構アクセスがあるのですが、恐らく期待した情報とは違っていたんじゃないかと心苦しく思っていました。
今回はBluetoothモジュールを使った正真正銘の自作Bluetoothスピーカーと言えるので、参考になったという人は増えるのではないかと期待しているのですがいかがでしょうか。
一方で不満点と言いますか、作ってみた結果反省すべき点がいくつも見つかりました。
今回僕なりの反省点も残しておいたので、これを参考により素晴らしい自作Bluetoothスピーカーを作ってもらえればと思います。
今日はそんな感じで。
ではでは~